特別対談
歌手として活躍。現在は声優や執筆活動などにも
活動分野を広げる。
妹・登紀子が良い仕事を長く続けられるよう
社業の安定・社員の育成に奔走する。
もう15年くらい前になるのかしら。姉妹で経営していたレストランビルの契約更新時に、リオさんに交渉にあたっていただいたのがお付き合いのはじまりでした。
初めて会った頃は中川さんもまだお若かったし、実は、あんまり信用してなかったのよね(笑)。でも思いきってお任せしてみたら、本当にパワフルで、私たちの側に立って仕事をしてくださった。私たち素人には難しいことも、俊敏に判断して、考えるべき課題をわかりやすく整理してくれて、とても勉強になりました。
不動産には法律や税金ぜんぶが関わってくるので、ひとりでたくさんの問題を解決するのは難しいですよね。だからこそ、弁護士や税理士、司法書士など専門家たちとチームを組んで対応すると、話がスムーズになる。それを形にしたのが、リオのファミリーオフィスサービスなんです。
そのひとつが、トキコ・プランニングが使用している個人所有物件を、現物出資という形で会社所有のものにし、社員が安心できる環境を整えるというものでした。
資産を共有して株式化することで、会社として資金調達の面で有利になりますし、個人としても、将来起こりうる相続がスムーズになるはずです。
そうですね。私も夫・藤本敏夫が他界したときの相続の手続きはとても煩雑で大変でした。
こういうことは、第三者の目が絶対に必要ですね。リオのような新しい感性を持つ財務管理のブレーンがそばにいてくれて、本当に助かりました。しっかりと現状を整理し、もしもの時に備えておくことがいかに大切か、よくわかりました。
今の日本の社会的テーマとして、次世代への承継があります。たとえば、日本には1800兆円を超える個人金融資産がありますが、その6割は60歳以上が保有しています。高度成長時代にがんばった方々が築いたものが、日本の資源として存在しているわけですね。その資源を活かして、次の世代にどんな環境を用意していくか。これは、ノウハウや生き方の話でもある。トキコ・プランニングも、お子さん、お孫さんの世代を見据えた動きをしていく時期なのかなと思います。
登紀子さんは、歌手生活50年を超えられたそうですね。これまでに築き上げられたものは、本当にすごい財産ですよ。財産といっても、あの歌、あの語りは、ほかの誰かに受け継ぐことは不可能だろうと思いますが(笑)。
今は、仕込みを終えたシェフのような気持ちなんです。わたしには、50年かけて蓄積したコンテンツがある。コンテンツって、食材と同じよね。それをうまく料理しながら、これから何でもやれるじゃない、と。ただ、音楽業界をとりまく時代の変化もあって、プロデュースしてくれる人が今はなかなか見つけづらいというのはあるけれど。
「登紀子さんは、たとえ辞めたくてもお客が歌手を辞めさせてくれないだろう」とよく言われますね。それだけのカリスマ性があるから50年やってきたし、これからも続いていく。
好きなことに打ち込んで、それが受け入れられて、半世紀もの間、観客を楽しませつづけているんですよね。だからこそ私は、登紀子さんは不動産を持たないほうがいいと思っているんです(笑)。資産に縛られると、保守的になってしまうかもしれない。不動産は幸子さんにまかせて、登紀子さんはやりたいことにすべてのエネルギーを注ぎつづけてほしいと思います。もちろん、実務面はリオがこれまで以上にサポートしていきますから。
今は、これからのことを考えるいい節目でもあると思っています。トキコ・プランニングも50年。次の世代に託すことを考えていかないと。私自身、実務から手を引いて、責任のあることは若い人に任せるようにしはじめました。
大番頭である幸子さんが抜けたあと、トキコ・プランニングをどうしていくか。家族全員できちんと話しあえるといいですね。私は、外の誰かに渡すべきではないと思っています。自由奔放に、やりたいことをやって成功してきた登紀子さんのDNAをよく理解している人が、大番頭もやる。それがいちばんではないでしょうか。そうでなければ、形だけは承継しても、いちばん大切なものが残っていかなくなってしまう。世代を超えて、トキコ・プランニングを豊かにしつづけるのがリオのミッションですから、これからも踏み込んだ提案をさせていただきたいと思います。